大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)902号 判決

被告人 椎橋平八郎

〔抄 録〕

右弁護人等の控訴趣意第一点について。

原判決が(一)昭和二十八年三月初頃の犯行である賍物故買罪並びに(二)同年同月初旬頃、同年五月中旬頃及び同年六月十日頃の犯行である各賍物牙保罪に該当する犯罪事実を認定し、これに対する法令の適用を示すに当り刑法第二百五十六条第二項第四十五条前段第四十七条第十条を掲げただけで罰金等臨時措置法の規定を適用せず、犯情の重い(一)の賍物故買罪につき定めた刑に法定の加重をした刑期及び罰金額の範囲内において被告人を懲役八月及び罰金五千円に処する旨判示していることは原判文上明白である。

しこうして記録及び原判決により明らかなとおり、本件犯行はすべて罰金等臨時措置法施行(昭和二十四年二月一日)後のものであるから、刑法第二百五十六条第二項のほか罰金の額について罰金等臨時措置法の規定が適用されることはいうまでもない。そこで各犯行の該当法条である刑法第二百五十六条第二項所定の罰金の多額は金千円であつて、本件犯罪の個数は四個であるから、これに対する罰金額は刑法第四十八条第二項を適用し、各罪の所定罰金額の合算額以下において処断するとしても金四千円にしか達せず、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号を適用しない限り、原判決の主文に表示されている罰金五千円という金額は到底これを引き出すことができない。

しかも原判決はその摘示にかかる四個の犯罪を刑法第四十五条前段の併合罪にあたるものと判示しているのであるから、これに対し併合罪の加重をするに当つては、各罪の所定刑中懲役刑については同法第四十七条第十条を適用して犯情の重いいずれか一つの罪の所定刑期に加重をし、罰金刑については同法第四十八条第二項を適用して各罪の所定罰金額の合算額以下において処断すべきであるのに、ことここに出でず、さきに述べたような法令の適用を示すに止まつているのであるから、罰金刑についても懲役刑と同様な加重方法をとつたものと解せられるのである。

すなわち原判決には、各犯罪の所定刑中罰金の額について罰金等臨時措置法の適用を遺脱し且つ罰金刑の併合加重の方法を誤まつた違法があり、この法令の適用の誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は他の論旨に対する判断をまつまでもなく、既にこの点において破棄を免がれない。

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